まず、登録先のルールを3つに分ける
「記号が使える」は、すべての記号を使えるという意味とは限りません。公式ヘルプと登録画面を読み、次の3つに整理すると設定を決めやすくなります。
| 区分 | 確認すること | 設定への反映 |
|---|---|---|
| 許可 | 文字の一覧か、英字・数字などのカテゴリか | 明示された範囲に合わせる。例示を完全一覧と決めつけない |
| 禁止 | 使えない文字、先頭・末尾など位置の制限 | 除外する。位置だけの禁止を全位置の禁止と読み替えない |
| 未記載 | 記号の完全一覧、空白、Unicode、長さの数え方など | 許可とも禁止とも断定しない。登録画面や管理者の説明を確認する |
文字の種類に加え、長さの上下限、大文字・数字などの必須条件、以前のパスワードや漏えい済みパスワードの拒否も確認してください。候補文字が合っていても、パスワード全体が受理されるとは限りません。
半角・全角:見た目が似ていても別の文字
ASCII の英字は A–Z と a–z、数字は 0–9 です。日本語の入力環境で「半角英数字・半角記号」と案内されるときは、この範囲が基本になります。ただし、半角カタカナは ASCII ではありません。
| ASCII | 似た別文字 | 違い |
|---|---|---|
A(U+0041) | A(U+FF21) | 半角英字と全角英字 |
1(U+0031) | 1(U+FF11) | 半角数字と全角数字 |
!(U+0021) | !(U+FF01) | 半角記号と全角記号 |
| 空白(U+0020) | 全角空白(U+3000) | どちらも見えにくいが別の文字 |
ハイフン -、長音符 ー、ダッシュ — も別の文字です。日本語 IME の変換、スマート引用符、コピー時に混じる空白に注意し、登録先が ASCII 指定なら英数入力で確認します。実際のパスワードを外部の文字判定サイトへ貼り付ける必要はありません。
公式資料の読み方:Google・Workspace・Entra は適用範囲が違う
以下は2026年10月8日時点の資料確認に基づく整理です。実際の登録試験は行っていません。登録・変更画面と、組織アカウントでは管理者の案内も確認してください。
Google アカウント:ASCII のカテゴリは説明されている
Google アカウント ヘルプは、半角の英字・数字・記号(ASCII 標準文字のみ)を組み合わせて使えると説明しています。アクセント記号やアクセント記号付き文字は使えず、スペースで開始または終了するパスワードも禁止しています。著しく弱いものや、アカウントで以前使ったパスワードも拒否対象です。
この資料は記号を一文字ずつ網羅した完全一覧ではありません。内部のスペースの全条件や、登録時の長さの厳密な上下限も、この説明だけでは確定できません。「12文字以上」は安全なパスワードを作るための推奨であり、登録に必要な最小文字数と同一視しないでください。
Google Workspace:8〜100 は管理者が設定する範囲
Workspace の管理者向け資料では、管理者がユーザーの最小・最大の長さを8〜100文字の範囲で設定できます。個々の組織に適用される値は管理者の設定次第です。この数字を個人用 Google アカウントの固定仕様として使うことはできません。SSO を使う場合など、適用条件も確認が必要です。
Microsoft Entra ID:クラウドの規則には空白も含まれる
Entra の公式資料では、クラウドで直接作成・管理されるアカウントについて、ASCII 英数字と列挙された記号、空白を許可し、非 ASCII の Unicode 文字を禁止しています。長さは8〜256文字で、小文字・大文字・数字・記号の4種類から3種類が必要です。ASCII 自体も Unicode の一部ですが、この資料の「Unicode characters」は ASCII 外の文字を指す文脈です。
記号と空白の明示一覧は次のとおりです。空白は見えないため、最後に説明を添えています。
@ # $ % ^ & * - _ ! + = [ ] { } | \ : ' , . ? / ` ~ " ( ) ; < >上の一覧にはバッククォート(U+0060)も含まれます。また、半角スペース(U+0020)が許可一覧に載っています。これは本ツールが空白を記号の入力欄で受け付けるという意味ではありません。
Windows のローカルアカウント/Active Directory は別に確認
Windows の複雑性ポリシー資料には、大文字・小文字に分類されない Unicode のアルファベット文字(アジア言語の文字を含む)のカテゴリや、パスワードフィルターが説明されています。ローカルアカウント、AD、Entra のクラウドアカウントを一つの「Microsoft の文字一覧」にまとめることはできません。
組織のポリシー、追加フィルター、同期・パスワード書き戻しの構成によって条件が変わります。Entra の8〜256文字や3種類必須という値を、Windows/AD の固定規則として流用しないでください。
Unicode:見た目の1文字と文字数の値は一致しないことがある
NIST SP 800-63B-4 §3.1.1.2は、Unicode を受け付ける場合の長さ評価で、各コードポイントを1文字として数えることを求めています。JavaScript の string.length は UTF-16 のコード単位を数えるので、同じ値にはならない場合があります。
Aは1コードポイント、UTF-16でも1コード単位です。😀は1コードポイントですが、UTF-16では2コード単位です。é(U+00E9)は1コードポイントです。同じように見えるe+結合アクセント(U+0065 U+0301)は2コードポイントです。
さらに、絵文字の組み合わせなどは複数のコードポイントが見た目の1文字になることがあります。見た目の文字数、コードポイント数、UTF-16の長さ、UTF-8のバイト数を混同せず、利用先が何を数えるか確認してください。
NFC は認証側の処理に関する推奨
NIST は Unicode を許可する認証側に、NFC(正規化形式C)による正規化を、パスワードを表すバイト列のハッシュ化前に適用することを推奨しています(SHOULD)。上の結合アクセントを含む表現は、NFC で合成済みの表現になる場合があります。
これは、ユーザーや生成ツールが入力を黙って書き換える指示ではありません。利用先が NFC を実装している保証もありません。登録・保存・ログインで同じ文字列を使い、端末ごとの表現の違いが認証に影響する可能性を考慮します。NFC は全角英数字を半角へ変える処理でもありません。
本サイトの通常のパスワード生成では ASCII の英数字と対応する半角記号を候補にします。Unicode や空白を必要とするルールを、そのまま再現する機能ではありません。
生成ツールで「許可する記号」と除外設定を合わせる
パスワード生成ツールで記号を選び、「許可する記号」の「サイトの指定に合わせて記号を限定する」を有効にすると、使用する半角記号を入力できます。この設定は allowedSymbols に対応します。
限定が無効なら対応する記号全体を候補にし、有効なら入力した記号との共通部分を使います。その後、似た文字・紛らわしい記号・追加の除外文字を取り除きます。入力順は選択の優先順位にならず、同じ記号を何度入力しても1種類として扱います。
有効な記号 = ツールが対応する記号 ∩ 許可する記号 − 除外する文字
実際の候補文字 = 選択した英字・数字と有効な記号の集合 − 除外する文字「実際の候補文字」には、この処理後の文字と種類数が表示されます。許可する記号の入力は許可範囲の指定であり、入力した各記号を必ず1回ずつ使う指定ではありません。記号を最低1文字含めたい場合は、記号を選択したうえで「チェックを入れた文字種を必ず1文字以上含める」も有効にします。
架空のルールで設定を追う:記号は !@_- だけ
架空のサービスが「16〜32文字、半角英大文字・英小文字・数字・記号をそれぞれ1文字以上、記号は !@_- だけ」と案内しているとします。実在サービスのプリセットやブランドの受理保証ではありません。
- 長さを20文字にし、英大文字・英小文字・数字・記号を選びます。
- 「許可する記号」の限定を有効にして
!@_-を入力します。 - 「除外する文字」に
@を入れると、有効な記号は!_-の3種類になります。 - ほかの除外を無効にしていれば、英数字62種類と記号3種類の合計65種類が「実際の候補文字」です。4種類の必含ルールを有効にして生成します。
この設定は、架空のルールの文字範囲・長さ・4種類必須に合わせたものです。公開された例をパスワードとして使わず、利用するアカウントごとに新しく生成してください。
設定が衝突したときの直し方
- 全角記号・英数字・空白を許可欄に入力:対応する半角記号だけを指定してください。入力を自動変換して受け入れる設定ではありません。
- 許可欄を空欄にする/許可記号をすべて除外:記号の候補が空になります。記号必須ならエラーになるため、利用先の条件を確認して許可・除外を直します。
- 候補文字が全体でゼロ:生成できません。少なくとも1種類の使用可能文字が残るように設定します。
- 頭文字が候補外/除外済み:頭文字を候補内の1文字に直すか、固定指定を解除します。文字数と必須文字種の条件も両立させます。
空欄は限定無効と同じではありません。記号を使わないルールなら記号の選択を外します。必含ルールを解除すると空の文字種があっても生成できる場合がありますが、利用先が記号必須なら条件を満たせません。エラー回避だけを目的に解除しないでください。
登録前に確認する4点
- 対象が個人用・組織用・クラウド・ローカルのどれかを確認します。
- 許可範囲、禁止文字・位置、長さ、必須文字種を登録先の説明と照合します。
- ツールの「実際の候補文字」で、許可記号と除外設定の結果を確認します。
- 新規に生成した文字列を登録先で設定し、パスワードマネージャーで保存します。拒否されたら公式のエラー説明を確認します。
本記事では各ブランドへの実際の登録試験を行っていません。設定例や候補文字の表示は、登録成功を保証しません。受理されない理由には文字制限以外のブロックリストや組織ポリシーもあります。
記号の必須化が安全性に与える影響は、別記事のパスワードに記号は本当に必要かで扱っています。このガイドは利用先の文字制限に合わせる手順を説明するものです。
参考資料と確認の限界
資料確認日:2026年10月8日。公開日:2026年10月9日。公式文書の記述と、その適用範囲を整理したものです。未記載の条件を実測値で補っていません。
- Google アカウント ヘルプ:安全なパスワードを作成する
個人向けの文字カテゴリ・禁止事項。記号の完全一覧や登録時の長さの上下限を示す資料ではありません。
- Google Workspace:Enforce and monitor password requirements for users
組織の管理者が設定する長さの範囲。個人用 Google アカウントの仕様とは区別します。
- Microsoft Entra:Password policies and account restrictions
クラウドで直接管理するアカウントの文字・長さ・構成規則。同期やオンプレミスには別の条件があります。
- Windows:Password must meet complexity requirements
Windows の複雑性ポリシーと文字カテゴリ・フィルター。すべてのローカル/AD 環境の受理を保証する一覧ではありません。
- NIST SP 800-63B-4:Password Verifiers(§3.1.1.2)
認証側への要件・推奨。各サービスの実装や登録結果を保証するものではありません。